すだれ使いの妙技について

取材に行って、いつも感じることは、すだれの扱い方が独特の使い方をしていることである。 一般的には、まな板または台の上にすだれを広げ、その上でいろいろな動作をし、手前から向こうへと「巻き込む」ものであるが、この千葉県流の巻き方は空中で巻き込むもので、私はこれを「空中巻き」と称している。 傍から見た目には、実に鮮やかなすだれ捌きなのである。私自身、名人たちから教わるまでは、全く自信がなかったものである。

すだれの使い方は「一般的には横目に置いたすだれの上に海苔または卵焼きを置き、具をあしらい手前から向こうへ向かって巻く」のであるが、当地の巻き方は具が整ったら向きを変え、左右から中身の造作をいたわるように寄せる方法が、原則である。 せっかく、すし飯の凹凸を作ったのであるから、壊さぬように丁寧かつ敏速に巻き込む必要があり、このあたりの感覚を早く会得することが上達の秘訣といえよう。指導する講師の手元を熟視して、早く「要領を覚える」ことが上達のカギである。 巻き方の要領をしっかり会得すれば、早巻きも上達し大量制作が可能になる。

さて、よくある質問だが「何本巻いたら上手になるか?」 それはあなた次第で、真剣に覚える姿勢が必要なことと経験を積むことが一番の近道なのです。 自分自身が納得するまで「何回も飽きずに巻く」ということも経験上必要かもしれません。

以前、某会社の社長の依頼で、祝いの文字巻きばかり30本ほど巻いた経験があります。 これを切ると約200~240ヶになり、お祝いの席を華やかに飾ったものでした。依頼された私たちにとっても、最初で最後の良い経験となっております。 また筆字の得意な方々は、文字巻きも上手な方が多いように見受けられます。

それにつけても、海苔巻きの芯に文字を巻きこむ、という発想はどこからきたものなのでしょうか? すばらしいアイデアではありませんか。 私は本当に心底から驚きました。今流に申せばカルチャーショックそのもの。